本バッチを解説する上で重要なポイントは「醸造用タンニン」、「Late Harvest」、「唾液分泌」、「Keep it Warm」の4点です。
どうぞゆっくりと確かめるようにお召し上がりください。
■「醸造用タンニン」は酸化防止の役割を果たす
“醸造用タンニンの主な供給源は、リンゴ(プロシアニジン類)とオーク材(エラグ酸、ガリック酸等)の2つであり、渋さ、熟成において酸化を防ぐという重要な役割も持っている。” (1)
今回の作品では、バーボン樽熟成で獲得したオーク由来のタンニンによって液全体が酸化から保護されています。
■「Late Harvest」の遅摘みホップで、フローラルな香りを強化する
レイトハーヴェストとは、収穫時期を遅らせる行為のこと。“遅摘みホップのカスケードは、メロンやフローラルな香りが強化される。” (2)
収穫時期を操作できるのは自社栽培の強みですよね。そんなサノバスミス好みのカスケードをふんだんにダブルドライホップし、フローラルなアロマと共に畑を感じさせる香りに仕上げました。
■「唾液分泌」とタンニンの関係性
ベースとなるリンゴは酸味の強い品種。酸っぱい香りは唾液分泌を促進します。唾液とタンニンは舌上で結合し、離れたときに渋みを認知するので、唾液分泌が多いとタンニンをより感じやすくなります。また、唾液は食欲増進作用があるので、本作品は食前酒にぴったりです。
■「Keep it Warm」、 飲み頃の温度帯
冷蔵温度帯からスタートして、その飲み頃は16℃~20℃付近です。この時に、ホップに隠れていた樽香が徐々に姿を現します。
香味:唾液を出す、酸味・甘味を想起する畑の香り。ホップ香に潜む樽香を少しずつ体感。
苦味:遅摘みカスケードでフローラルな柑橘系の苦みと畑を体感。
酸味:リンゴ由来の酸味で口内洗浄。唾液分泌でタンニンへの感度を上げる。
残香:ホップ、りんご、日本酒酵母、バーボン樽が混ざった香水のよう。
<参考文献>
(1) A. Versari, W. du Toit, G.P. Parpinello. Oenological tannins: a review. Australian Journal of Grape and Wine Research. 2012, 19, 1−10. doi: 10.1111/ajgw.12002
(2) Sharp, D. C., Townsend, M. S., Qian, Y., & Shellhammer, T. H. Effect of Harvest Maturity on the Chemical Composition of Cascade and Willamette Hops. Journal of the American Society of Brewing Chemists. 2014, 72(4), 231−238. doi:10.1094/ASBCJ-2014-1002-01