「これまでの知見を一つに結晶させる」をテーマに取り組んだ本ロットは、素材構成こそ複雑ですが味わいは極めてシンプルです。グラニースミス・スウィートグラス・野生酵母・エール酵母、それぞれの個性をまっすぐに引き出しました。
透き通る液色、穏やかに溶け込む甘い芳香、素朴でありながら華やかな、まさに“オリジナル”らしい仕上がりです。 操業開始以来、多くのバッチに挑んできましたが、今では、気候や原材料の条件を丁寧に観察・分析し、深く思考する姿勢こそが醸造に不可欠な要素だと考えています。
試行錯誤はこれからも続きますが、その時々の農業と自然環境に真正面から向き合い、挑戦を続けていきたい。
今回のサノバスミス オリジナルは、私たちのそんな姿勢を端的に示す1本です。
なぜ塩気を感じるのか?ソースサイダーとオリジナルはいずれもグラニースミスを主発酵に用いていますが、ホップを使用したものがソースサイダー、スウィートグラスを使用したものがオリジナルになります。塩味を感じるのは後者のみであるため、要因はスウィートグラスにあると考えられます。
塩味は主にナトリウムイオン(Na⁺)が上皮型ナトリウムチャネル(ENaC)を刺激することで知覚されます。一方、スウィートグラスの主香気成分クマリンは G タンパク質共役型受容体を介して信号を伝達し、味細胞を脱分極させる可能性があります。クマリンが ENaC の感度を高める、あるいは味細胞の応答を増強することで、実際の Na⁺ 濃度以上に塩味が強調されていると推測できます。 りんご由来の要因 グラニースミスは酸味が強く、リンゴ自体の Na⁺ 含量はごくわずか(約 2 mg/100 g)。酸味(H⁺)と塩味(Na⁺)はどちらも陽イオンの流入によって味細胞を脱分極させるため、スウィートグラス由来の香気成分がこの相互作用を促進している可能性があります。
同一の母液ながら、ソースサイダーとオリジナルに大きな香味の違いが生じることは非常に面白く、是非飲み比べとしてもご賞味いただけたら幸いです。