今期のPLUM HAZEは3回目のロット、過去一番大量にプルーンを使用したフルーツサイダーになります。プルーンは300kgをイギリス系専用品種(Yarlington Mill, Harry Masters Jersey)と共に野生酵母(プルーン, リンゴ)で発酵しました。
ワイン中の鉄を含む金属イオンは土壌由来(防除による薬剤や醸造工程でのアクシデントを除く)とされており、特にFe2+イオンは魚介類と組み合わせることで生臭みを発生し、Fe3+イオンはタンニンと結合して混濁の要因にもなります。
生臭さにおいては、鉄の濃度を1ppm以下に抑える必要があります。プルーンはそこまで鉄を多く含みませんが、大量に使用すると鉄の濃度は高まるので、生臭さに対するケアはとても重要です。
鉄の除去には、シュールリーが一番効果的であるとされ、死滅した酵母には鉄を吸着する能力があるようなので、4種類の異なる原酒をブレンドしてシュールリーしてみました。プルーン濃度が一番高い原酒では、多少の生臭さを感じたのに対し、シュールリーしてからは生臭さが消えました。
鉄に対する悪い要因をまとめてしまいましたが、アセトアルデヒドとタンニンの様なフェノール化合物の結合を触媒してくれる良いところも実はあります。
今回は熟成ホップを使用したフジの原酒に加えて、イギリス系専用品種のYarlington MillやHarry Masters Jerseyを使用しました。実際のところ、AstringencyやBitternessなタンニンの質が短期間でどんどん変化していきます。その味わいの変化からも、鉄が触媒として機能しているのを感じさせてくれます。熟成期間をもう少し長くしたらどのような変化があるのか、楽しみなところでもあります。去
年はバーボン樽で熟成したフジの原酒を使用してプラムヘイズを作りましたが、それは樽由来の非フラボノイド系(Gallic Acid, etc)によるタンニンの質を、鉄の触媒機能でどこまで変化できるかを実験的に確かめるため。そのため原酒はSweetであるフジ100%で試してみたのです。
今回のプラムヘイズは樽熟成ではなく、専用品種と熟成ホップがブレンドしたヘリテイジの要素1/4、モダンスタイル3/4の条件で遊んでみました。それぞれの違いをぜひ確かめてみて下さい。我々は定番品でも毎回違う条件で発酵しているので、いろいろ発見があって面白いですよ。